Feelings.


「ありがとう。それじゃ、また明日。」
 そう言って悠(ハルカ)は図書室を出た。
 時刻は17時を回っている。受験生とは言え、18時が門限なのは少しキツイなと思いながらも、靴を履いた。
 佐野悠はそれでも毎日図書室に行った。悠の大好きな人が、図書委員だから。同じクラスの人だから、逢えないわけじゃないけれど少しでも傍に居たいと。そういう気持ちで何時もいた。
 悠自体、本は大好きなので図書室に居ることは少しも苦痛でない。同じ空間に彼も居る。毎日の放課後が待ち遠しくて仕方ない。
 そんな日々を送っていた。
 足取りも心なしか何時もより軽く感じるのは、今日は何時もより会話が出来た所為だろうと思う。お互い、本が大好きでクラスも一緒なので話も弾む。

「図書室に居る時は時間が止まればいいのに・・・・。」
 独りごちて、校門を出た。
 図書室で借りた本を歩き読みしながらの帰宅は毎日の日課だった。借りた本を、その日のうちに読んで、また本を借りに行く。高校受験に向けての勉強も、しなくてはならないのだが、彼と逢うために、本を読む時間など惜しむ筈がなかった。


 翌日、友達の宮柳麻美と一緒に学校に行く途中、昨日のことを話した。
「昨日ね、賢斗君といっぱい喋ったんだーw」
 悠が嬉しそうに言うと、麻美も笑った。
「どんな話したの??」
「えっとね、小説のことだよ。私が読んでた小説をね、賢斗君も読んだことがあるんだって。その話で盛り上がったの。」
「へ〜w良かったじゃん♪で、今日こそは、『おはよう』って言うんだよ??」
「うっ・・・・」
 麻美は悠の恋を応援してくれている。悠は、賢斗に「おはよう」を言えないから毎日こうやって麻美は言う。しかし、麻美の発言も虚しく、今日も悠は言えない。まだ学校には着いていないが、それが悠にはわかっていた。
 ――・・・・・頑張れ、私。
 そう自分に毎日言い聞かせる。
「おはよー。」
「はよっw」
 教室に入ると、友達からの挨拶。悠は明るく返事をした。
 教室には、賢斗が居る。にも関わらず、悠は結局「おはよう」を言えなかった。他の人(勿論男女)には言えるのに、賢斗を前にすると、どうにも言葉に詰まってしまう。動悸が耳に聞こえるくらい、ドキドキして頭が真っ白になっていくから。

「賢斗君。昨日借りた小説、賢斗君の言った通り、面白かったよ。」
 「おはよう」は言えないけれど、ドキドキを押さえて自分から話かけることは出来る。
「だろ?主人公とヒロインの考えが、凄く良いし。」
「うん!私もそう思った。感動した。」
 ふと、悠は思った。
 今まで沢山話をしているが、その殆どが自分から話かけたもので、賢斗から話をかけてくれることはあまりない。あったとしても、苗字を呼ばれたことはない。
 好きな人と会話している時に、どうしてかそんな事を思った。
 突然、何だか虚しくなった。
「・・・・どうした?」
 はっとした。
「・・・・へ?」
「や、何か突然、ぼーっとしたから。」
「あ、ううん。何でもないよ。それじゃあ。」
「うん。」
 (何やってんだろ、私。すっごく些細なことじゃない。苗字呼ばれないのは寂しいけど、他の子を呼ぶときだって、賢斗君は「ねえねえ」じゃない。)
 自分も所詮、他の女の子と同じ扱いだという当たり前のことを考えて、落胆した。
 彼の特別には自分はなれない。なんだか、そう思ってしまった。





「宮柳ー。」
 (あ、誰かが麻美のこと呼んでる。)
 頭の片隅でそんなことをぼんやりと考えながら、悠は麻美の傍に行く。
「賢斗君、どうしたの??」
 ドクン。と心臓が何時もより大きく鳴った。
「昨日、テレビにお前の好きなアーティスト出てたけど、見た?」
「えー!マジで??見てないよー。」
 嗚呼、麻美と賢斗君が会話してる。
「何か、色々暴露ってた。」
「どんなこと言ってた?!」
 話の内容は、まあ別として。
 ショックだった。麻美の事は、苗字で呼ぶという事が。
 ドクンドクンという心音が、妙に頭に響く。
「そっかー。見たかったなあ。」
「そんだけだから。じゃ。」
「うん。」
 私は特別になれない。寧ろ、麻美以下だった。
「悠・・・・・?」
 私の顔を覗きこんでいる麻美は、賢斗君に苗字で呼ばれてる。
「悠?」
 悲しい。私は・・・・・。
「悠???」
「あ、どしたの?」
「『どうしたの?』はこっちの台詞だよ。」
「えへへ、今日図書室で何喋ろうか考えてただけだよ。」
「ふぅん?そう?」
「うん。」
 嘘を、付いた。今は、麻美に本音を言いたい気分ではなかったから。
 賢斗にちゃんと呼ばれている麻美が何だか許せなかった。麻美は何も悪くはない。だから、そう思ってしまう自分が許せなくて、英語の授業中は自己嫌悪して落ち込んでいた。

 お昼休み、教室で麻美と悠は喋っていた。賢斗のことや、テレビのことを。
「あ!そういえば、賢斗君に聞きたい事あったの忘れてた。」  突然、麻美が言った。
「ちょっと聞いてくるね!!」
 そう言い残して、賢斗の方へ駆けて言った。
 会話が聞こえた。
 内容は、別に賢斗に聞かずとも、悠に聞いても分かるような事だった。
 トクン、と音がした。
 (どうしてワザワザ賢斗君に聞くんだろう。)
 麻美は以前、悠に「極力、悠の好きな人とは喋らないようにするよvだって、そういうのって見てるとちょっとムカっとしちゃうでしょう?」と言っていた。だが、麻美の言う「極力」とは、悠に聞いてもわかるような事を賢斗に聞くという程度のものだったのだろうか。「極力」と言うならば、それは悠に聞けば良いことではないのだろうか。
 鼓動が高鳴る。
 そして、怒り。
「ただいまぁ。」
「おかえりー。聞きたいこと、わかった?」
「うん。」
 しかし、悠は抑えた。その気持ちが、自分勝手な気持ちだと解っているから。


 放課後、悠は再び図書室へ行った。
 図書室には、賢斗しか居なかった。
「これ、返しに来たんだけど・・・。」
「あ、はいはい。」
 自分の気持ちを、言ってしまった方が、楽かもしれない。伝えた方が、良いのかもしれない。
 悠は思った。もうすぐ中学も終わってしまう。だったら、振られたって平気だわ。と。





 断られるのなんて、目に見えてる。



 私は、キタナイ。




 自分勝手で、汚いから。




 でも、

 それでも伝えたい。



 「貴方が、好きです。」













 Fin.











*あとがき*
半分は、自分の素直な気持ちを書きました。なので、文脈がおかしい所が沢山あります。。
けれど、直そうとは思いません(ぇ)
何故なら、自分の気持ちを率直に書いたものだから、訂正をしてしまうと、微妙に変わる恐れがあるからです。
解りにくい内容かとは思いますが、何と無ーくでいいので、気持ちが解っていただけたら幸いです。











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