始まり
私は霊の声が聞ける。
でもそれは、何かに入った霊の声しか聞こえなくて、媒体がなければ聞こえないそれ。
初めて声を聞いたのは10歳の時。金色のくるくる巻いたロングヘアーの、鮮やかな色のドレスを纏(まと)った淡いブルーの瞳をしたフランス人形に入っていた。夢だと思ったあの頃。
もうあれから5年も経った。今でもその霊とは仲良しで、いつもその霊は人形に入ってて、流石に何年かに1回は媒体を変えるわけで、そのフランス人形は何時からか、部屋から消えていた。
カタンコトン・・・カタンコトン・・・カタンコトン・・・
夕方・・・異様に耳に届く定期的な音に、ベッドに転がっていた玲音は頭を上げた。
自分の部屋には玲音以外いる筈もなく、聴こえるのは「カタンコトン」という何かの音と時計の音だけで。居るのは玲音一人だけで。
時計の音はともかく、その耳に響く其の音は、どうやら部屋の何処かで鳴っているようだった。
「ったく・・・折角寝てたのに・・」
あんまり五月蝿いから・・・、と言葉を続けようとして,飲み込んだ。
『ネェネェ、貴方ハ私ヲ覚エテル?』
ベッドのすぐ傍で誰かが私に話かけてる?そんな筈はない。だって、今家には私一人のはずなの。
『ネェネェ、私ガ誰ダカ知ッテル??』
クスクスと可愛い笑い声が聞こえてきた。
まさか――――・・・
ベッドの傍の、声の聞こえる方を見た。
・・・・・フランス人形だ。
「何だ、人形か。」
ほ・・、と安堵の声が出た。だって、そこにあるのはただのフランス人形。首を左右にカタンコトンと奇妙な音を立てて揺らしながら笑ってる、ただのフランス人形。
「勿論。ちゃんと覚えてるし、貴方のことは知ってるよ。」
私はフランス人形に向かってそう言って、人形を抱っこした。
『・・・本当?』
先刻まで笑っていた可愛い顔が、とても悲しそうな顔になって、今にも泣き出しそう。
「本当だよ。だって、このフランス人形が、貴方と出会うきっかけになったんだもん。」
そう。この人形に宿った魂と出会った、始まりの人形。
今では別の人形に居たはずの魂がもうボロボロになった昔の媒体に入るなんて滅多にないことだけど。
でも、これは貴方と出会った始まりの人形。全てはこの人形から始まったのだ。
始まりは 何時まで経っても始まりで
決してなくならない存在で
この人形は 私と貴方の始まりの存在―――。
fin
あとがき
100のお題第1作目。かなり短い文になってしまいました・・・。
しかも文メチャメチャだし;
いつも「ぁ!」って思いついてから書くので、考えながら書くのは
とても大変でした・・・;
でも、これもいい体験ですので、頑張ってあと99作作ります・・・!!