流星


 静かな町、ココはウエスタベリの中心からかなり外れの方にある少し田舎の町。化石燃料を大量に燃やしながら黄色い排気ガスを出して走っているタクシーも殆ど通っていないし、わずかな森林もある所為か、空気が少し澄んだ感じがした。
「ねぇ、兵長。今日はこの町に泊まろうよ」
 首にぶら下げたラジオに話をかけながら、前を歩く赤銅色の髪をした長身の男の背中を見つめた。
『何でこの町に泊まりたいんだ?』
「えっとね・・・星・・・が、良く見えそうだから・・」
 ここのところ、都会にばかり泊まっていたので星の一つも見ていなかった。この町なら少しでも見れるかな、とキーリは思ったのだ。
「星?」
 前を歩いていた男は不意に足を止めた。
「お前、星なんて今まで“見たい”とか言ったことなったのにどうしたんだよ」
 ラジオの紐を弄りながら上目遣いにこちらを見上げるキーリに疑問を投げかけた。
 キーリは少し考えたあと、小さな声で「流れ星」とだけ言った。
「は?流れ星?」
「うん・・・今日、いっぱい流れ星が見れるんだって。私、流れ星って見たことないから・・・」
 流れ星・・。俺も何十年生きてるけど、そんなもの見た憶えもないし、見たいと思ったこともない・・・。というか、
「そんな情報、どこから知ったんだよ」
 ラジオはずっとロックがかかっていたり、兵長が喋っていたりでニュースなんて聞いていなかったし、誰かと会話をしたりはしてない筈なのに、キーリは一体どうやって流れ星の情報を?
「通りすがった子が話してたの。『今日は沢山流れ星が見られるから、お星様にお願いしないとね』って」
 それ聞いてハーヴェイは一瞬自分の耳を疑った。
「お願いって・・・まさか、お前、星に願い事したいのか?」
 キーリは紐を弄るのを止めて、小さくコクンと頷いた。
「神様にお願いする気はない。だってどうせ叶えてくれないもん。でも、お星様は神様と違って叶えてくれるってベッカが言ってたから・・・」
 神も星も願いなんて叶えてくれるわけがない。ハーヴェイはそう思っていたが、キーリにこの考えを押し付けるわけにもいかないので溜め息混じりにキーリの要望を聞き入れた。
 もう辺りが大分暗くなっていた。



 泊まる場所を決めたのはもう外が真っ暗になっていた頃だった。真冬なので外が暗くなるのにそう時間はかからなかった。
 ハーヴェイは窓から顔を出してずっと空を眺めている少女を煙草を吸いながら見ていた。時々寒そうに体を震わせて、手に息をかけている。
 ・・・・そんなに寒いなら窓を閉めればいいのに。
「・・・・出掛ける?」
 いきなり声をかけたので、キーリが一瞬びくっとした。
「・・・え?」
「ココに来るまでの間に野原みたいな所見つけたから、そこならきっともっと星見える」
 キーリの顔が見る見るうちに明るくなって「うんっ行く!」と嬉しそうな声を出した。
『おい、俺を置いてくなよ!』
 机の上に置きっぱなしだった兵長が怒鳴った。
「あ、ごめん兵長」
 くすくす笑いながらラジオを持ち上げて首からぶら下げた。

「わぁ・・・・っ」
 野原に着いた時、キーリは感嘆の声をあげた。そして野原に寝転がり、空を眺めた。
「きれー・・・」
 ハーヴェイはキーリの横に座って、そこから見える風景に目をやった。・・・昔とは随分変わった。実はココに来た時にこの場所を見かけたのではなく、昔来たことがあっただけだった。
「ね、ハーヴェイは何か願い事する?!」
「・・・別に」
 これといって星なんかにお願いすることなんて無かった。
「キーリは?」
「えへへ、内緒」
 聞いておいて自分は言わないのかよ、と少し思ったが自分は「別に」としか言ってないし、気にしたところでどうにもならないので、キーリが言いたくないのなら無理に聞き出すことないだろうと思い直した。


「あ」
「?」
 キーリが声をあげたのでキーリの方に目をやった。キーリは目瞑って何か小さな声で言っている。
「流れ星っ・・・流れたよ」
「・・・見てなかった」
『俺はちゃんと見てたぜ』
 見てないのは俺だけかよ。
「・・・で、ちゃんと願い言えた?」
 兵長が見たとかはどうでも良いとして、キーリがちゃんと願いを言えたのかを訊いた。
「うんっ。ちゃんと言えたよ」
 頬を少し朱に染めてはにかんだ。
 自分の上着をキーリ被せ、頭を軽く撫でて「じゃ、帰ろ」と言って歩き出す。
「え、これ・・・」
 ハーヴェイが被せてくれた上着を見ながらキーリが言う。
「大分冷え込んできたから」
 それだけ言ってどんどん歩いていく。あまり離されるといけないのでキーリはラジオを揺らしながら走った。
「願い、叶うかなぁ?」
 息を少し弾ませて後ろからハーヴェイに訊く。
「さぁ?そのうち叶うんじゃない?」
「叶うといいな・・・」



 兵長はずっと黙っていた。
 兵長にはキーリの願い事が聞こえてしまったから。



―ハーヴェイと、これからもずっと一緒に居られますように―
という願い事が。










fin



*あとがき*
ご、ごめんなさいっ!(土下座
何だか物凄くキーリを書きたかったので書いちゃいましたが、話が・・・話が・・・ッ・・!!
しかも兵長の台詞少ないし・・。兵長、ゴメンよ・・(ょょょ
キーリはともかく、ハーヴェイのキャラが難しかった・・。私はハーヴェイが好きなので上手く描写したかったのですが、文章下手故におかしなハーヴェイになってしまいました・・・・。










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