ある小説家への手紙





こんにちは。

そちらは寒いんでしょうか。こちらは、今冬初めての雪が、一昨日降りました。

貴方が私にくれた薔薇も、どことなく、寒そうに見えます。

暖かいストーヴの焔で揺らめきながら、はらりとまた、紅い花びらが朽ちていきます。


薔薇って、滅亡の証ね。


滅亡は、いけないものとされています。

自ら滅びる、ことも、悪いこととされていますね。

でも何故、滅びは美しいのでしょう

活きることへの反抗

そんな事では無いのでしょう。

死への美学

そんな事じゃないでしょう

そうじゃなくては活きられなかったのでしょう?


今ね、私、薔薇に話し掛けてるんですのよ、私。

私ったら、おかしい。

くすくす笑っちゃう。なんか、愉快でも無くて、怒りでも無いのに。

心ん中は空っぽですのに、なんだか心地良いんです。

ぽっかり開いた穴が丸みを帯びて、温かさを帯びて、私をまるまる、包み込んじゃった。

不思議です、自分でも、よく分かんないんだもの。


きっと、私思うんですの

滅びがいけないこととされているのは。

それがあまりにも美しすぎて、美しすぎるから。

そう、私は白痴だから、貴方みたいに言えないけど

美しいことは、罪。

人の世を惑わせる、美しき、夢魔。

きっと、そうだからなんですのよ。


でも分かっております、貴方が朽ちたのは、そんなものの為じゃないということ

貴方の心が美しかったから、だけのことで

これは何の煽てでも無くて、心から

貴方の事を慕っていて、そんな揺らめく貴方に私は陶酔したのであって

それを、哀しむ事を貴方はきっと願っていないから

私、きっと心が、清清しいのよ。



でも、きっと嘘。

今言ったの、嘘。



私ね、きっと貴方に死んでもらいたい、なんて心では思ってないから穴が開いたの。

ホントはね、死んでよかったなんて、清清しいなんて

思っちゃいないんです。


貴族気取りでごめんなさいね

でも、貴方はそんな貴族気取りを妬んでるって言って。

僕は百姓上がりだから、って言って。

何時もみたいに頭をかいて、

「イヤァ、参った、参った、惚れちった」

なんて言うんでしょうね。


でも、そのあとの口づけのぬくもりは

もう二度と私に帰ってこないのよ


ねェ

私ね

きっと、多分、もう、駄目。

多分、もう、駄目。


だって、活きて行くのが出来ないんですもの

貴族だから、分かんないんですもの


だから、御傍に居させて下さるでしょう?

さようなら、なんて言いません

天国でお逢いましょう、なんて言いません


貴方がどう考えても、天に召されたなんて考えられないの

恋と退廃に生きた、それに生きるしかなかった貴方が、神に救われるわけ無いから。


いじわるね。

本当に、いじわるね。


薔薇は、滅亡の証だから

先程墜ちた、薔薇の花びらを貴方の口元に置きに行きます


だから私の口元にもおいてあげてね。


ハムレットよろしく

さようなら。

本当に、さようなら。














*コメント*
紗蘭様から相互記念にいただきましたw
「切ない感じのを下さいッ!」なんて我儘に副って作ってくださいました。
切ないッ。しかもその切ない感じが自分に重なって更に切ない・・・(ぇ
紗蘭様の小説は自分と重ねあう所が幾つもあって、一人頷いたりしてます。だから本当に、いただけて嬉しいです!!
私もこっそりプレゼントを用意しておきますね(こっそりかょ)

紗蘭様のサイトはコチラからw









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